神奈川県総合リハビリテーションセンター

高次脳機能障害支援

神奈川県における高次脳機能障害支援について

 

神奈川県では、神奈川県リハビリテーション支援センターを拠点機関として、高次脳機能障害支援普及事業を行っています。事業内容は、「相談支援」「地域支援(地域ネットワークづくり)」「普及啓発(相談支援体制連携調整委員会開催、県民向けの高次脳機能障害セミナー理解編開催)」「研修事業(高次脳機能障害セミナー実務編・就労支援編・小児編、ネットワーク連絡会、事例検討会)」等となっています。また、専門性の高い相談支援機関としての県・圏域の自立支援協議会への参加、政令指定都市と神奈川県の情報交換会、広域会議への参加(関東甲信越・東京ブロック合同会議や全国支援コーディネーター会議への参加)等もしています。

 

 

【事業の展開】

 

神奈川県総合リハビリテーション事業団は、H13年度から高次脳機能障害支援モデル事業に参画してきました。この時期、神奈川県単独事業である地域支援推進検討事業として、「高次脳機能障害相談支援の手引き」「働く人のために」といった手引きを作成しました。H18年度より障害者自立支援法施行に伴い、地域生活支援事業都道府県実施分である「高次脳機能障害支援普及事業」の拠点機関となり、相談支援コーディネーターを配置して、事業を展開しています。

 

 

【地域ネットワークづくり事業】

H19年度より高次脳機能障害支援普及事業が本格的に稼働しましたが、地域内で「高次脳機能障害」という言葉も定着していない中、相談先や日中活動先の確保、医療機関や就労支援機関等の連携等が課題でした。神奈川県には政令市を含んで33市町村がありますが、すべての市町村でネットワークづくりを行うことは効率的ではありませんでした。幸い、神奈川県は県域、障害保健福祉圏域、市町村と3層構造による支援体制の構築を目指していました。そこで、障害保健福祉圏域単位でネットワークづくり事業を行う中で、①「支援システム検討委員会」設置により関係機関の連携を促進する、②障害福祉事業所への「実態調査」を行うことで高次脳機能障害者の障害福祉利用実態を把握するとともに普及啓発を図る、③「研修会」を行うことで普及啓発活動の実施、④「事例検討会」の開催により具体的な支援方法や連携手法を学ぶ、といった取り組みを行いました。本事業の効果として、高次脳機能障害の普及啓発が行うことができた、市町村毎で支援の中心となる相談支援事業所とつながった、があげられます。

 

 

【政令市との情報交換会】

神奈川県にはH20年当時横浜市、川崎市と2つの政令指定都市がありました。高次脳機能障害支援普及事業は都道府県単位での拠点機関設置が謳われていましたが、政令指定都市への設置が定められておらず、横浜市、川崎市は独自の支援体制構築の必要性がありました。そのような中、横浜市総合リハビリテーションセンター、川崎市北部リハビリテーションセンター、拠点機関である神奈川県地域リハビリテーション支援センターが連絡会を行うことで、それぞれの地域での支援体制構築や情報共有を目的として、年2回参集しています。
R4年度には、川崎市中部リハ、川崎市南部リハ、れいんぼう川崎、高次脳機能障害地域活動支援センター、相模原市も参加して情報交換会を開催しています。

 

 

【巡回相談】

H22年度より、横須賀市、藤沢市を対象として高次脳機能障害巡回相談を行いましたが、相談件数が伸び悩みつつ2年が経過しました。そのような中、H24年より相模原市のかわせみ会が主催する「高次脳機能障害当事者家族の集い」に参加し、専門相談を行うこととしました。あるいは、H24年9月より藤沢市より委託を受けた光友会が「チャレンジⅡ」を開所したことに伴い、当事者会への参加とともに専門相談を行うこととなりました。この「当事者・家族会の開催」と「高次脳機能障害専門相談」を同日に開催することで、一般的な相談は当事者家族と情報共有するとともに必要に応じてピアサポートが受けられ、個別性の高い相談は前後に個別面談の時間を設けて対応するというスタンスが定着しました。あるいは、当事者・家族の相談に対して、拠点機関の支援コーディネーターが行う助言内容を地域支援者が見聞きすることで、地域での支援力向上にもつながっています。その後、小田原市、大和市の委託相談支援事業所と連携して、同様の「当事者・家族会」と「専門相談」の開催を継続しています。

 

 

【事例検討会】

高次脳機能障害支援には、医療・障害福祉・介護保険・就労支援機関等の連携が欠かせません。しかし、具体的な連携手法について研修会等でお伝えすることには難しさがあります。また、職種や支援対象によって情報収集のポイントが異なったり、支援プランにも差異が見られます。そこで、H22年度、受傷発症時から社会参加に至るまで、必要な情報収集(アセスメント)を行い、多機関を利用した形でのプランニングや社会制度利用を行うことを目的とした高次脳機能障害研究会を発足させ、翌H23年度からは地域支援者を対象とした事例検討会を実施しています。
この事例検討会では、多職種によるグループワークも含んでおり、自身では気づかないアセスメントやプランニングの視点に気付き、学んでいただくことも目的としています。

 

 

【高次脳機能障害支援機関ネットワーク連絡会】

 

 

神奈川県内での高次脳機能障害支援が充実していく中で、主な支援対象者を高次脳機能障害者とした支援機関が散見されるようになってきました。これらの機関は、地域内で高次脳機能障害支援の専門機関とみられ、支援困難事例の相談等が寄せられる中で、疲弊していく様子が垣間見られました。そこで、高次脳機能障害を積極的に支援している機関が定期的に連絡会を開催することで、情報交換や支援技術の共有と向上を目的として、高次脳機能障害支援機関ネットワーク連絡会を年2回開催しています。情報交換会では、各機関の近況報告、情報交換、支援困難事例の共有等を行っています。

 

【まとめ】

このように、神奈川県では神奈川県リハビリテーション支援センターが拠点機関となり、普及啓発、連携構築のために、個別支援だけではなく、「事例検討会」「巡回相談(地域での当事者家族会開催)」「高次脳機能障害支援機関ネットワーク連絡会」「政令市と神奈川県の情報交換会」を行っています。これらより、医療、障害福祉、介護保険、就労支援機関等をつなぎ、連続性のある支援が構築できるように、重層的な取り組みを行っています。

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